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組み合わせ確率論

 

このページの改訂版を

岡本安晴「統計学を学ぶための数学入門[上]」2008、培風館

に含めました。

また、上記下巻

岡本安晴「統計学数学入門」2009培風館

も上梓しました。

 

1.確率の基礎的性質

 

確率とは、事象の起こり易さを0から1までの数値で表すものであり、などと表す。必ず起こる事象の確率は1であり、絶対に起こらない事象の確率は0である。事象の最小単位を数え上げることができるとき、確率は以下のように計算できる。

まず、さいころ投げについて考える。さいころ投げの場合、最も小さい事象の単位は出た目の数1、・・・、6として表すことができる。「偶数の目が出た。」ということ(事象)は、出た目の数の集合{2,4,6}として表すことができる。すなわち、さいころ投げの結果は、集合

 

={1,2,3,4,5,6}

 

の部分集合として表すことができる。このとき、「1の目が出る」という事象は集合{1}で表される。さいころ投げの結果を事象と呼ぶとき、事象は部分集合で表すことができると考えられる。ここで、上のを標本空間(sample space)、の要素を標本点あるいは見本点(sample point)と呼ぶ。さいころ投げの事象の生起確率は、の各要素(標本点)に与えられた確率から求めることができる。

 いま、目の数が出る確率

 

(1.1)                           

 

と与えたとする。このとき、偶数の目が出る確率は

 

 

となる。ここで、事象の確率を表す記法であるが、事象は標本空間の部分集合として考えているので、事象の確率は

 

 

と表すのが自然である。しかし、の要素が

 

 

というように与えられているとき、をその要素を並べた形

 

 

で表すこともある。

 一般に、標本点の数が有限個で、それらが、・・・、と表されているとき、すなわち、

 

 

のとき、事象の確率はの確率から求まる。事象個の標本点からなる部分集合

(1.2)                         、 

 

のときは、の確率は次式で与えられる。

 

(1.3)                       

 

 (1.2)式の集合は、事象「またはまたは・・・」を表すので

 

 

である。

 標本点が有限個ではないが数え上げることができるときも同様である。標本点を、・・・、、・・・で表すとき、それらの確率をで与える。このとき、標本空間

 

 

である。有限個の標本点からなる事象の確率は(1.3)式で与えられ、無限個の標本点からなる事象

 

、 

 

の確率は次式(1.4)で与えられる。

 

(1.4)                     

 

 

1.1

 さいころ投げの確率を次式で与える。

 

、 

 

すなわち、上の確率は1が出やすく、6が出難く細工されたさいころを表していると考えられる。このとき、偶数の目が出る確率は

 

 

となる。

 

 

 式(1.3)あるいは式(1.4)で与えられる確率は、の部分集合に0から1までの数値を対応させる関数と見ることができる。この関数は次式

 

(1.5)                    

 

を満たすように設定されなければならない。式(1.5)はすべての標本点を集めた集合、すなわち常に生起する事象(何らかの標本点で表されることが生起するという事象)に対する確率を表している。

さらに関数は次の性質を満たす。

 

(1.1) 任意のに対して、

(1.2) 有限個あるいは無限個の事象;有限個のとき:あるいは;無限個のとき)が次式

 

 (のとき)

 

を満たすとする。ここで、は空集合を表わす。

このとき、

 

 

が成り立つ。

 

 

 性質(1.2)における条件

 

 (のとき)

 

を満たす事象は互いに排反であるという。

 

 

1.2

 さいころ投げにおいて、偶数の目が出る事象と奇数の目が出る事象は排反である。すなわち、

 

、 

 

なので、

 

 

となっている。

 

 

 

 一般に、事象の集合の積

 

 

は事象と事象がともに生起する事象を表す。したがって、

 

 

と書ける。

 

 

1.3

 公正なさいころにおいて、目の数が偶数であって、かつ3の倍数である確率は次のようになる。

 目の数が偶数である事象は

 

 

で、目の数が3の倍数である事象は

 

 

で表される。したがって、

 

となる。

 

 

 

 空集合の確率は

 

 

と定める。空集合は決して起こらない事象を表している。例1.2の場合、出た目の数が偶数でありかつ奇数である事象は空集合であるので

 

 

となる。すなわち、出た目の数が偶数であり、かつ奇数である確率は0となっている。

 

 

 

2.条件付確率と独立

 

事象が生起したという条件のもとで事象が生起するということは、事象の世界の中で事象を考えるということである。したがって、事象が生起したという条件のもとで事象が生起する確率(で表す)は、事象の確率に対する事象の確率の比率として与えられると考える。すなわち、

 

 

と定義する。

を、Bを条件とするAの条件付確率(conditioned probability)という。

2.1 条件付確率

 

 

2.1

 公正なさいころ投げにおいて、偶数の目が出たという条件のもとで6の目が出る確率を考える。

 

、 

 

とおくと、

 

 

となる。

 すなわち、

 

 

である。

 

 例2.1ではの確率は、条件の下では確率となり大きくなっている。これに対して、条件付確率が元の確率に等しいとき、すなわち

 

(2.1)                    

 

が成り立つとき、事象は独立(independent)であるという。

 式(2.1)が成り立つことは

 

(2.2)                     

 

が成り立つことと同じであり、また

 

(2.3)                     

 

が成り立つこととも同じである(付録参照)。

 

 

 

2.2

 公正なさいころ投げにおいて、偶数の目が出るという事象をで、3の倍数の目が出るという事象をであらわす。すなわち、

 

、 

 

とおく。このとき、

 

 

が成り立っている。したがって、事象は独立である。

 次式も成り立っている。

 

 

 

 

2.3

 公正なさいころ投げにおいて、1が出るという事象を、奇数が出るという事象をであらわす。このとき、

 

 

となるので、事象は独立ではない。

 

 

 

問題2.1

 例2.3において、およびが成り立たないことを確認せよ。

 

 

 

3.積空間

 

事象の集合を、その部分集合を要素とする集合をとしたとき、事象の確率からへの関数

 

 

と考えられる。と確率を一組にして考えたものを確率空間と呼び、などで表わす。

個の確率空間の積を次のように定義する

 

(3.1) 事象の集合を次式

 

 

で定義する。

 

(3.2)  の標本点の確率を次式

 

 

で与える。

 

 

確率空間の積において、定義(3.2)によりの事象との事象は独立である(ただし、)。

 

 

 

3.1

 2回のさいころ投げは2つのさいころ投げの確率空間の積として表される。このとき、1回目の目の数が2回目の目の数がである確率は、上の定義(3.2)より

 

(3.1.1)                         

 

で与えられる。ここで、2回のさいころ投げの結果を表すものであり、および1回目のさいころ投げの結果がである確率および2回目のさいころ投げの結果がである確率を表している。

 1回目の結果と2回目の結果が独立ではないようなさいころ投げは、式(3.1.1)とは異なる確率を設定することになる。

 

 

 

4.期待値

 

から実数値への関数を、上の確率変数(random variable)と呼ぶ(ただし、の要素はすべて数え上げることができるものとする)。の値がに対応して決まるということは、事象の確率的な生起の様子に応じて、の値のとられ方が決まると解釈できる。簡単にいうと、「Xの値は確率的に決まる」ということになる。

上の確率変数の期待値(expectationは次式(4.1)で与えられる(定義)。

 

(4.1)                           

 

の期待値は、の平均(値)(mean)ともいう。

このとき、次式

 

 

で与えられるの分散(variance)と呼び、その平方根

 

 

の標準偏差(standard deviation)と呼ぶ。

 

 

 

4.1

サイコロ投げの場合、確率変数を出た目の数を表わすものとすれば

 

、 ;  

 

となる。このとき、の平均値は次式

 

 

で与えられる。

 

サイコロをN回投げたとき,の目が回出たとする。このとき、出た目の数の平均値Mは次式

 

 

で与えられる。さいころ投げにおいて、確率は多数回繰り返しサイコロを投げたときのの目が出る期待度数のに対する比率に対応していると解釈できる。すなわち、

 

のとき 

 

と期待される。これは、数学的には大数の法則(law of large numbers)の特別な場合である。

公正なさいころ投げの場合、

 

のとき、 

 

と期待されるので

 

 

と予想される。

一般に、Xの期待値は、多数回の繰り返しを行ったときのXの平均値を表わしていると解釈できる(数学的には大数の法則として示される)。

分散は]の平均からのずれの2乗の期待値

 

 

なので、]の値の平均値からの散らばり具合を表していると解釈できる。

 

期待値について次の性質が成り立つ。

 

(性質4.1) 2つの確率変数XとY、および2つの定数aとbに対して次式が成り立つ。

 

 

分散については次の性質が成り立つ。

 

(性質4.2                        

 

ここで、は、次式

 

 

で与えられるもので、相関係数と呼ばれている。

 

 

 

 平均値の定義式

 

(4.1)                         

 

において、和をXの値ごとにまとめてとることもできる。いま、

 

 

とおけば、

 

 

となる。

 Yについても同様に

 

 

とおけば、

 

 

となる。

 

 

とおくとき、確率変数XYは、任意のに対して次式(4.2)

 

(4.2)                          

 

が成り立つとき独立であるという(定義)。

 

 

(性質4.3)確率変数XとYが独立であるとき、定数aとbに対して

           

 

が成り立つ。

 

 

 

問題4.1

 上の (性質4.1)(性質4.3)の成り立つことを証明せよ。

 

 

 

5.ベイズの定理

 

いま、事象、…、が次式

 

(5.1)                         、 (空集合)

 

を満たすとする。すなわち、事象全体の集合個の部分集合、・・・、に分割する。このとき次式

 

(5.2)                        

 

が成り立つ。式(5.2)はベイズの定理と呼ばれている。

 式(5.2)が成り立つことは次のように示すことができる。

(5.1)が成り立つことより

 

        

 

が成り立つ。ゆえに

 

                         

                             

 

を得る。

 

 

 


解答例

 

問題2.1

 

 

よって、

 

 

である。

 

 

よって

 

 

である。

 

 

 

問題4.1(略解)

 

(4.1) 

 

 

 

4.2

 

 

 

4.3

 

 ]とYが独立、すなわちが成り立つので

 

 

を得る。

 したがって、

 

 

となるので、性質(4.2)より性質(4.3)の成り立つことがわかる。

 

 

 

 


付 録

 

 

次式

 

(A.1)                      

 

が成り立つとする。上式を

 

 

と書くことにより次式

 

(A.2)                       

 

と同値であることがわかる。(A.2)式は次式

 

(A.3)                      

 

に書き換えることができる。

 以上より、(A.1)式、(A.2)式、(A.3)式はお互いに同値であることがわかる。

次の式変形

 

      

                              

                              

 

を用いると、式(A.2)が成り立てば、

 

        

                        

                        

                       

 

が成り立つ。ここで、の補集合を表す。

したがって、式(A.2)が成り立てば、

 

(A.4)                      

 

も成り立つ。

式(A.4)は、事象、すなわち事象Bが生起しない、という条件のもとでのAの条件付確率が、Bの生起を考慮しないときの確率に等しいことを表わしている。

式(A.2)はAとBについて対称なので、互いに同値な3つの式(A.1)〜(A.3)のいずれかが成り立てば(このとき、3つが成り立っている)、Aを条件とする次の式

 

 

も成り立つことがわかる。

 が独立であれば、が生起しないこと()と、あるいはが生起しないこと()と、およびも独立である。

 

 


参考文献

 

(1)日本数学会編集「岩波数学辞典」第3版、岩波書店、1985

(2)小谷眞一「測度と確率1」岩波書店、1997.

(3)小谷眞一「測度と確率2」岩波書店、1997.

(4)渡部隆一「確率」共立出版株式会社、1966.

 

 

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