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岡本安晴(著)

統計学を学ぶための数学入門[]

―算数から数学へ―

培風館,2008

ISBN: 978-4-563-01004-1

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本書は、数学を十分に学習してこなかった読者だけではなく、受験勉強の数学は十分にやってきた読者に対しても統計学を学ぶのに役立つ数学の直観的理解を提示するものとして役立つところがあるように工夫した。

 

数学を十分に学習してこなかった読者にとっての本書

統計学の入門書レベルの学習に必要である基礎的レベルの数学、四則演算から微積分、確率、行列まで、を一通り直観的理解に重点を置いて簡潔に説明した。

 

数学の勉強は受験勉強でやってきた読者にとっての本書

内容は上記のように基礎的なレベルであるが、統計学の理解に適した直観的理解を重視するとともに、大学での高等数学の内容を踏まえた説明を行った。四則演算の説明は、抽象代数学を念頭に置いた解説を用意した。べき乗を指数関数に拡張するために数列と極限の概念を予め説明した。微分も多変数関数の微分(偏微分)の解説を含め、積分は体積の計算の一般化として説明し多重積分の解説も行った。確率では、確率変数を「ランダムに確率的に変動する値をもつ関数」というような曖昧な(ある意味で間違った)説明ではなく、測度論の立場から関数の1つとして数学的に明確な定義を与えた。統計学では確率モデルをMCMCなどの乱数を用いてシミュレーションによって分析することが盛んに行われるようになったが、本書ではこれら乱数およびMCMCの解説も行った。また、統計学やデータ分析の分野では行列を用いて式を簡潔に表すことが普通なので、行列の説明も簡単ではあるが行った。行列に関する詳しい解説は、本書[]で行っている。

 

サンプルプログラム(Visual C++版)

サンプルプログラム(C++/Linux版)

統計学の入門書


内容(「はじめに」から抜粋)

 

 本書は、文系の大学受験で入学後、統計学の勉強のため数学が必要になった人のために用意されたものであるが、コンピューターを活用するMCMCなどのシミュレーションによる分析法に関連する基礎的なことも扱っているので、広く統計学の勉強を始めようとする人にとっても数学の入門書として楽しんで頂けると思う。

 統計学では、現象を数学モデルで表して分析することが主として扱われるので、数学についてのある程度の知識は不可欠である。本書では、統計学を学び始めるときに最小限必要になると思われる数学の基礎的事項を直感的に本質的なことが理解できるように説明することに努めた。また、統計学的分析は今日ではパソコンなどのコンピューターを用いることが普通であるが、その場合プログラミングが自分で出来ると楽しく、また分析の自由度も高くなる。プログラミングの技術力を高める方法の1つは経験を積み重ねることである。プログラミングの楽しさを伝えるためという目的もあって、本書では簡単なC++によるプログラミング例も幾つか用意した。数学的な計算を実際にプログラムを書いて行ってみると、数学とプログラミングの両方の面白みが味わえると思う。

本書の構成は以下のようである。

1章では、加減乗除の四則演算についての基本的なことを説明した。また、統計学的分析とかデータ分析では計算結果の有効桁を意識した書き方が必要であるので、四則演算の場合の有効桁について付記として説明した。

2章では、順列と組み合わせについて説明した。これらは、数え上げることのできる事象の確率を計算するときに必要となる概念である。

第3章では、集合と関数について基本的なことを説明した。これらの知識は、確率など数学の他の分野を理解するときに必要となる。

第4章では、数列と極限について説明した。これらの概念も、数学の他の分野を理解するときに必要となる。

第5章では、数え上げることのできる事象の確率を説明した。説明は、直観的な理解が可能であるようにするとともに、読者がさらに進んで学習するときのことを考えて数学的厳密さ(測度論的確率論)との繋がりにも留意した。

第6章と第7章では、3角関数、指数関数、対数関数について説明した。これらの関数は、統計学においても基本的な関数としてよく用いられるものである。

第8章では、微分と積分について説明した。これらは解析学として数学の基礎領域をなすものであるが、統計学あるいは確率論において必須の知識である。また、計算の有効桁について第1章におけるものとは異なった観点から説明した。

第9章では、連続な事象の確率について説明した。第5章で説明されている「事象が数え上げられる場合」の確率と区別して扱った。測度論を用いて統一的に扱うことが可能であるが、本書が対象としている大学での数学にまだ不慣れな読者の場合は、数え上げられる場合と連続な場合とを分けて説明する方がよいと考えた。

10章では、乱数について説明した。近年、パソコンの高性能化により、解析的取り扱いが難しい統計学的モデル(確率モデル)も乱数を用いたシミュレーションによって分析が可能となった。特にMCMCという手法の導入により、統計モデルの可能性が飛躍的に高まった。本章では、これらの基本的な考え方について説明した。C++によるプログラム例も用意したので、読者はこれらを参考にして、この新しい手法に馴染まれることを期待している。

11章では、行列について説明した。最近の統計学の書物や文献では行列の知識が不可欠となっているが、本章では基礎的なことに読者が慣れるようにという目的で説明した。また、C++によるプログラミングにおいて配列の扱いに便利なクラス型についても簡単に説明した。基本的なプログラミングにおいてはこれで対応できるが、より便利な機能を備えたクラス型は本書下巻において示す。

 

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